最近、AIで作られた画像や動画を目にする機会が本当に増えました。
商品のイメージ画像も、存在しない人物も、実際には撮影していない場所やシチュエーションも、かなり自然に作れるようになっています。数年前なら大掛かりな撮影が必要だった表現を、パソコン一台で形にできる。映像を作る側としても、とても便利な変化です。
ただ、その一方で最近感じていることがあります。
AIで何でも作れるようになればなるほど、「実際に撮影した写真や映像」の価値は、逆に上がっていくのではないか。
今回は、AIを使うか使わないかという二者択一ではなく、企業が商品、人、場所、仕事の現場を実際に撮って残す意味について考えてみます。
「これは本当にあるの?」と思う時代になった
以前であれば、企業のホームページに商品写真が掲載されていれば、「この商品があるんだな」と、そのまま受け取ることができました。
店舗の写真があれば、その店舗がある。働いている人の写真があれば、そこでその人たちが働いている。写真や映像には、見た目を伝えるだけでなく、ある意味「証拠」としての役割もありました。
しかし生成AIが普及すると、その前提が少しずつ変わっていきます。
- 綺麗なオフィス
- 笑顔で働くスタッフ
- 美味しそうな料理
- 理想的な商品使用シーン
こうしたものを、実際には撮影せずに作ることも技術的には可能になりました。
だからこそ、見る側にも「これは本当にその会社なのか」「この商品は実際にもこう見えるのか」という感覚が、今まで以上に生まれてくるのではないかと思っています。
「AIを使っていないこと」が価値になる動きもある
2026年8月20日、6秒のループ動画を投稿するSNS「Divine」が、招待コードを不要にして一般公開されました。
Divineの公式発表によると、同サービスはAI生成コンテンツを禁止し、「Creative power belongs in human hands(創造する力は人の手にある)」という考えを掲げています。一般公開に合わせた最初のブランドコラボレーションには、Taco Bellが参加しました。
「AIを使えば新しい」だけではなく、「AIではないから見たい」という価値観も生まれ始めている。その動きは、企業が発信する写真や動画を考えるうえでも興味深いものです。
数千ドル規模で作られたアニメが400万ドル超に
中国でも、興味深い現象が起きています。2026年に公開されたアニメ映画『Niu Lai(The Bull Comes)』です。
Reutersの配信記事によると、この作品は制作費が数千ドル規模とされる、粗削りな自主制作アニメーションでした。公開初週は苦戦しましたが、SNSや現地メディアをきっかけに話題となり、2026年8月20日時点で興行収入は400万ドル相当を超えています。
Reutersはこの現象を、若い世代による、過度に洗練されたマーケティングやAIへの反発をめぐる社会的な話題としても紹介しています。
ここで面白いのは、「ものすごく高品質だったから売れた」という単純な話ではないことです。粗さや不完全さも含めて、人が作ったものとして受け取られた。その人間味が、作品の魅力の一部になっています。
だからといって、AIを使わない方がいいわけではない
僕はAIそのものを否定したいわけではありません。
企画を考える。アイデアを広げる。完成イメージを共有する。編集や確認の作業を効率化する。AIを使った方がよい場面は、映像制作の中にもたくさんあります。
ただ、「作れるもの」と「実際にそこにあるもの」は別です。
この二つを目的に応じて使い分けることが、これからの企業発信では重要になると思っています。
商品撮影は「商品の存在」を伝えるものになる
商品を販売している会社なら、商品のイメージをAIで綺麗に作ることはできるかもしれません。
一方で、実物を撮影することで伝わる情報があります。
- 表面の質感や素材感
- 光が当たったときの色や表情
- 手に持ったときのサイズ感
- 接合部や細部の仕上がり
- 実際に使用したときの動き
少し極端に言えば、商品撮影は「綺麗に見せるため」だけではなく、「この商品は本当に存在していて、実際にはこう見える」と伝えるためのものにもなっていく。そんな役割が強くなる気がしています。
実物の形や質感を複数の角度から見せる方法として、陶器15点を1日で撮影した360度商品撮影の事例も紹介しています。
人や現場も同じ
これは商品だけではありません。
- 実際のスタッフが働いている姿
- 職人が商品を作っている工程
- 工場や店舗の現在の様子
- スタッフへのインタビュー
- イベントに人が集まっている光景
こうした写真や動画には、AIでは置き換えにくい「本当にそこで起きている」という情報があります。
採用サイトなら、応募者が知りたいのは理想化された職場だけではなく、誰と、どのような場所で、どのように働くのかという現実です。会社紹介や店舗紹介でも、実際の人や現場が写っていること自体が信頼材料になります。
今のうちに「リアルな素材」を撮りためておく
企業の販促を考えるなら、これから重要になるのは派手な広告だけではないと思っています。
- 日常の仕事風景
- 商品と制作工程
- スタッフや職人
- 工場、店舗、施設
- お客様とのやり取り
- イベントや節目となる出来事
こうした何気ない場面も、写真や動画として残しておく。数年後には、それが今以上に価値のある企業資産になっている可能性があります。
ホームページ、SNS、求人媒体で使う素材は、必要になってから別々に撮るより、一度の撮影で用途を整理して揃える方が効率的です。具体的な撮り分けについては、ホームページ・SNS・求人サイトの写真を一度の撮影で揃える方法にまとめています。
AI時代だから、リアルを撮る
これからAI画像やAI動画は、さらに自然になり、見分けることも難しくなっていくと思います。
だから撮影という仕事がなくなる。僕はむしろ逆だと考えています。
実際の商品。実際の人。実際の場所。実際に起きたこと。
AIで架空の表現を簡単に作れるようになるほど、それらをきちんと写真や映像として残す意味は大きくなる。
「綺麗だから撮る」のではなく、「本物だから撮る」。
これからの企業写真や映像には、そんな価値も加わっていくのではないでしょうか。
